曲目解説

In Japanese Only.

劇音楽「夏の夜の夢」より序曲、他抜粋 Op.21/61
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ

一年で最も短い夏至の夜には妖精たちの力が強まり、幻想的なことが起こる…そんな言い伝えを元にしたシェイクスピアの戯曲。パック始め個性的な妖精たちが、人間と妖精の恋 愛や結婚にまつわるあれこれをドタバタそして円満に導く。この喜劇をメンデルスゾーンが「演奏会序曲」として音楽のキャンバスに描いたのはわずか17歳の頃でした。
祖父は著名な哲学者、父は銀行家であったメンデルスゾーン家では、文化人が集う私的な演奏会が頻繁に開催され、彼自身も若い頃から音楽、絵画、文学と多方面に才能を表しました。この序曲も仲の良かった姉ファニーとピアノ連弾を楽しむために作曲され、後に管弦楽に編曲されたようです。
フルートの「妖精の和音」に導かれ、弦楽器の細かい音符に表現される幻想的な森の中へ。華やかな宮廷の音楽、コミカルな職人たちの音楽、夢見る恋人たちのテーマ、時には魔法で姿を変えたロバの嘶きが聞こえる等、序曲では劇の様々なシーンが回想されます。

序曲は単独でも人々に愛されましたが、メンデルスゾーンが34歳のとき、文化政策を進めていた当時のプロイセン国王の命により、他12曲の付随音楽が作曲されました。この頃メンデルスゾーンはユダヤ人が 故の差別や、職場としていたベルリン音楽界での地位を巡る妬みに心身を疲弊させる状況にありました。そんな中初演は圧倒的成功を収め、冷遇したベルリンですら「夏の夜の夢」は喝采で受け入れられました。
妖精たちが生き生きと舞う「スケルツォ」、魔法が恋人たちを眠りに誘う美しい「夜想曲」、今日誰もが 知る名曲「結婚行進曲」など魅力に溢れた曲が並びます。

「私たちは『夏の夜の夢』に育てられたといってもいいでしょう」姉ファニーの言葉が語るように、メンデルスゾーンの人生とともにあった曲。第6回演奏会ではフラットフィル選りすぐりの抜粋でお届けいたします。

(Vla 鈴木光子)

クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲 Op.88
マックス・ブルッフ

ドイツ、ロマン派の作曲家ブルッフ。作曲家としては珍しく長寿で、82歳まで生きた彼の最晩年73歳の作品です。
名高い作曲家の多くは、例えばモーツァルトがオペラであり、ベートーヴェンがピアノソナタであり、チャイコフスキーがバレエ音楽であった様に、それぞれ晩年のライフワークとしてテーマを持った作品を残しています。ブルッフにとってのそれは「ギリシャ神話」であり、ギリシャ神話に於ける「愛・復讐・エゴイズム・英雄」などの人間(神々)模様を音 楽の中に表現しました。この曲も、クラリネットとヴィオラとオーケストラにそれぞれのキャラクターを持たせる事により、ロマンチシズムの中に見え隠れするエゴイズムなど、彼の求める「霊感の源泉」を表現する事に成功した最高傑作となりました。
クラリネット奏者として活躍していた息子の為に書かれ、作曲翌年に息子フェリックスとヴィリー・ヘスを独奏として、ヴェルヘルムスハーゲンにて初演されましたが、気難しい作風が当時の民衆には受け入れられず、出版されたのは彼の死後20年後でした。現在では、ブルッフの数ある協奏曲的作品の中で最もいぶし銀の様な光を放つ作品として、多くの人に愛される名曲です。

第一楽章 アンダンテ・コン・モート
ヴィオラで情熱的に開始される導入が直ちにクラリネットに引き継がれ、両者の掛け合いの後、スカンディナヴィア風の主題がクラリネットで呈示されます。

第二楽章 アレグロ・モデラート
短い序章の後、クラリネットが優美な第一主題を歌いそれをヴィオラが引き継ぎ、両者の掛け合いが始まります。一旦間を置いて可憐な第二主題がクラリネットで歌われ、転調を繰り返しながら第一主題が再現、やがて優しい表情で終息します。

第三楽章 アレグロ・モルト
トランペットで始まるフィナーレに相応しい明るく活気に満ちた序奏に続いて、力強い主題が全奏で呈示されます。その後極めて変化に富む音楽が展開され、華やかに曲を締めくくります。

(Cl 高井洋子)

交響曲第2番 ハ長調 Op.61
ロベルト・シューマン

ザクセン王国(現在のドイツ)、ツヴィッカウの有名な出版社を営む家に生まれたシューマンは、音楽の才能を早くから現し、また同時に文学にも親しみながら育った。1845年の秋、シューマンはメンデルスゾーンに宛ててつぎのように書き送った。「少し以前から私のなかでハ調のトランペットがひびいています。これからどのような形のものが生まれてくるのか私にはわかりません」。その少し前から悩まされていた激しいうつ症状と闘いながらも次第に交響曲としての形を成してゆき、1846年ライプツィヒにて、メンデルスゾーンの指揮で初演された。その後シューマンは当時を振り返ってこう述べている。「私は、これをまだ半分病気の時にスケッチした。いうなれば、これは、そうした気分に対して反抗した作品である。」精神の病によって綴じ込められているある種の世界、心の檻の中から脱して、人と人が共存している世界へ帰りたいという願望、もがき、あがく様子がこの曲にはよく現れている。いわば全力投球されているためスケールが大きく作りも複雑だ。強い心のエネルギーが既存の形を打ち破っている情景は、シューマンの音楽の特徴でもあり、その意味でこの第二番は彼の交響曲の中でももっとも彼らしい魅力に溢れているとも言えよう。 歴史に名を連ねるほとんどの大作曲家と同じく、彼の曲もまたキリスト=神への信仰が土台 となっており、例えば「三位一体」の三、魂が救われることの喜びを表す数字ともいえるのではないかと思うのだが、これがリズムとなって「タタタ」「タンタンタン」「ターンターンターン」など、この曲においてもしつこく出てくる。結局は救いの力が勝つのだ! と叫んでいるようでもある。ぜひ耳をすませてみてほしい。また人が好きだったシューマンは、特に尊敬する人への憧れを募らせると自身の音楽にそれが影響することもよくあった。例えば彼がまだ交響曲に本格的に着手する以前にシューベルトのハ長調の大きな交響曲の遺稿を発見し、その初演を聴いた時、「交響曲を作曲しようという気がむらむらとおこった」そうだ。ちなみに今回の第二番も同じハ長調。また、この第二番の特徴である、苦しさをのりこえて喜びに辿りつく、という全曲を通したストーリーは、歓喜の歌で有名なベートーベンの交響曲第九番と共通している。その他にも先述の二人やメンデルスゾーン等の影響が見られる。そしてシューマンの音楽もまた、ブルッフなど後の多くの作曲家に影響を与えている。

第1楽章…遠くから聞こえてくるような、例のトランペットの、ソとレを使った堂々とした旋 律と、シューマン自身の心のうごめきを表すような弦のウネウネしたはっきりしない動きとではじまる出だしはこの曲を特徴づけている。病との奮闘、とりつこうとするものとそれから必死に逃れようとするあがきの楽章。

第2楽章…手のつけられない躁状態を表しているのか、ねずみが家を食いあらしつつ駆け回 っているかのような速い十六分音符の連続のメロディが印象的。それは滑稽さも感じさせ、客観的な振り返りの記録であるようにも伺える。間には、裏を返したら別世界だった、なトリオが2回挟まれる。

第3楽章…しぼりだすように歌われる非常にメランコリックなメロディが、複数の楽器によって交互に歌われる。この楽章のみハ短調。長調のように感じるところも雰囲気は暗い。絶望と希望の、絶望よりの狭間にいるのか。

第4楽章…ようやく苦しみから抜け脱したことの喜びと感謝の楽章。途中、闘病を思い起こ し第3楽章、第1楽章のメロディも登場する。最終的には神への感謝を表すかのごとく、3連符のリズムが、繰り返し強調するように打ち鳴らされる。

(Vn 鹿野露馨)

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